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Page No.14
◆ ノヴェルティー・グッズ ( musical novelty goods または musical fancy goods ) ◆
Essay014 掲載 2005/6/14

ノヴェルティーという言葉をどういうふうに訳しましょうか? Fancyとは「意匠を凝らした」とか「装飾的」、「極上の」というような意味合いがあるようです。Noveltyとは「目先の変わったもの」とか「新案物」というような意味があるそうです。Gadget(ガジェット)も似たような感じですが、これにはガラクタに近い感覚があるようです。雑貨というのが近いのでしょうけど、少し寂しいですね。

シリンダー・オルゴールがスイスのお土産産業(やっぱりガラクタ的ですか?)として発展していくと、販路を広げるためにいろいろな工夫がなされていきました。当時の人々は毎日使っている日用品に音楽というスパイスを組み込むのが大好きだったようです。もちろんスパイスだから高価なムーブメントは到底使えず、小型の安価なものが大量に採用されていました。その例を下に挙げますが、よくま〜ま〜こんなにいろいろなものに組み込んだことです。その中には今でも生産が続けられているものもあります。

当時のUS$の価値ですが、金の価格を基準にして換算してみると100年前のUS$ 1は現在の2,300円程度になります。しかし当時は工業製品の価格は農産物と比較すればもっともっと高価だったのではないでしょうか、また山国で冬の副業として細々と作っていたスイスのチープ・レイバーの要素も考えねばなりません。
ノヴェルティー・グッズ のカタログ
絵の位置を下記のようにします。
一段目    1      2   3


二段目    4   5   6   7



三段目        8   9  10


四段目    11  12  13  14
出典 カタログ・リプリント A. Schellhase P18〜21

絵 1  ミュージカル・アルバム、カタログによればアルバムを開くとシリンダー・オルゴールが2曲演奏するそうです。絹のプラッシュ仕上げ、写真77枚収容で当時7.50ドルでした。

絵2と3  いわゆるシンギング・バードでオルゴールではありません。ゼンマイ動力で啼いて羽ばたいて嘴を動かします。小鳥(ハミング・バードやナイチンゲール)の鳴声は小さな笛、プランジャー、鞴で出していました。カタログによると応接室の飾りに最適とあります。当時50〜100ドルとかなり高価で、15インチのテーブルトップ型ディスク・オルゴールと同じレベルでした。現在もドイツやスイスで生産が続けられています、今の価格も当時と同じくハイクラスです。

絵4  ミュージカル・マニキュア・セットまたはレディーズ・コンパニオンで2曲付き。当時12ドル。

絵5  ミュージカル・デカンタで、持ち上げると2曲演奏するそうです。当時7ドルでした。

絵6、13  標準的なスタイルのミュージカル・アルバムで2曲付き、絹のプラッシュ仕上げ。当時6.50ドルでした。これは現在でも日本(残念、日本では光センサーで演奏を始める電子オルゴールが標準仕様になってしまいました)やスイスで作られ続けています。

絵7  ミュージカル・ワーキングボックスまたはレディズ・ネセサリ、つまり針箱でしょうか。シルク・プラッシ仕上げで2曲付き。当時6.50ドルでした。

絵8  ミュージカル・セービング・バンク、貯金箱です。コインが煙突から投入されると2曲演奏。幅が11インチ1/2(約30cm)もあります。当時2曲入りが6.50ドル、4曲入りが8.00ドルでした。

絵9  ミュージカル・チェア、2曲付き。今でも似たデザインで生産が続けられているようです。当時の価格は15.00〜25.00ドルでした。

絵10 ミュージカル・スモーキング・スタンド2曲付き、当時は今ほどでタバコが目の敵にされなかったようです。当時の価格は9.00〜20.00ドルでした。

絵11 メカニカル・バード・オルガンまたはセリネット。小鳥に歌を教え込むための小型の手回しオルガンです。当時の価格は6曲入りが10.00ドル、8曲入りが12.00ドルでした。

絵12 スイス・シャレー(Swiss chalet)、スイスの山小屋風の家にオルゴールを組み込んだものです。小型の安価なものから、大きな良質のムーブメントを組み込んだものまで作られました。大きなものは屋根を開くとデカンター・セットやスモーキング・セットが収められたりしていました。

絵14 ミュージカル・シガー・テンプル、2曲付き。ボタンを操作するとオルゴールを演奏が始まり全体が回転しながら扉が開いて、扉のポケットに収められた葉巻を取り出すことができます。現在でも同じデザイン(タバコ用ではなくてスティック・シュガー用)でスイスのリュージュ社によって生産が続けられています。

上記のカタログ以外にも多くのものが作られました。サイト・オーナーの知っている例を列挙してみましょう。まず小物からです。
1 ミュージカル・ディッシュ
台の付いた菓子皿で、皿を反時計回りに回すとゼンマイが巻き上げられ、手を離すと演奏が始まるものです。現在でもスイスのリュージュ社で生産が続けられております。

2. ミュージカル・マグ
ビヤ・マグやビヤ・ピッチャーの台座に小型のオルゴールが組み込まれていて持ち上げると演奏が始まるものです。今でも作り続けられております。

3. ミュージカル・インクスタンド
100年前というと手紙を書く以外に通信手段がありませんでした。当時の識字階級の家庭にはしゃれたデザインのインク・スタンドやラップ・デスクが普及していました。

4. ミュージカル・クリスマスツリー・スタンド
台の上にクリスマスツリーの幹を差し込んで固定する円筒が付いており、スタートさせるとディスク・オルゴールの演奏が始まると同時にクリスマスツリーが回転を始めるものです。カリオペ社からグロリオサ(Gloriosa)のブランドで販売されたものが有名です。

5. ミュージカル・ドアチャイム
現代のリュージュ社のカタログに電動式のオルゴールによるドアチャイムが掲載されています。

6. トイレット・ペーパー・ホルダー
これには驚きました。紙を引っ張り出すとオルゴールが鳴るそうです。現行商品です。

このほかにもキーホルダー、宝石箱、シガレット・ケース、杖、時計、シール(封蝋用の印章)などなどキリがありません。

最後に大物からですが、もうこのクラスになるとノヴェルティーの範疇を超えておりますでしょう。
1. デューイ(Dewey)、エクリップス(Eclipse)
ミュージカル・ギャンブリング・マシン、今で言うパチンコやスロット・マシンのようなものでしょうか。アップライト・オルゴールのような形で正面に回転するルーレットが取り付けられていて、下部に中型のシリンダー・オルゴールが組み込まれています。鍍金のヒカリモノを多用した恐ろしく品のないデザイン。バウアーズのエンサイクロペディア、92〜95ページに詳細な記事が掲載されています。

2. オートマータ
自動人形のことですが、これをノヴェルティーと呼ぶには大きな抵抗を感じます。オートマータだけで一つの大きな世界を作っているからです。詳細な解説はその専門のサイトをご覧ください。

3. プラクシノ・スコープ
映画の前身でしょうか。外側の円筒の内側に12枚の動作を分解して描いてある絵を回転する内側の円筒に取り付けられた多面鏡に映して、シリンダー・オルゴールの演奏つきの動画を楽しむものです。東京の「オルゴールの小さな博物館」で完全に動作する実物が見られます。

4. レジーナ・ミュージカル・チャイナ・クローゼット
レジーナ社で作られていた15インチのオートマチック・ディスク・チェンジのオルゴールを、陶器を飾る棚に組み込んだもの(Style 335)です。少数(記録では11台)しか作られませんでした。東京の「オルゴールの小さな博物館」で実物が見られます。

5. レジーナ・ミュージカル・デスク
レジーナ社で作られていた27インチのディスク・オルゴールを、両袖机に組み込んだもの(Style 61)です。少数(記録では蓄音器との兼用型であるレジーナフォン組込も含めて40台前後)しか作られませんでした。東京の「オルゴールの小さな博物館」では受付用机として実用に供されています。



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