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アコーディオン・トップ ( Accordion Top )
g01 G0109 掲載 2005/4/19

この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「フォールディング・トップ」G0615の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。


イギリス Coniston Lakeの風景を掲載しています。

アズイズ ( As Is )
g011 G0110 掲載 2005/4/19

この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「オークション」G0117の記事を参照してください。 記事の中では赤字でこの用語を表記しています。
イギリス Windermere湖の風景を掲載しています。

アップライト型 ( Upright Style )
g011 G0102 掲載 2005/4/11

縦型のディスク・オルゴールのことで、下左の絵のように大型(ビンを含めての高さが2メートル以上、そして音も大きい)のものが多く主としてパブ、サロン、ホテルなどで営業用として設置されていました。ほとんどが営業用としてコインオペレートになっています。指定のコインを投入すると1曲または2曲(店主がタイミング・レバーを操作して選択する)を演奏するようになっていますが、店主がオーバーライディング・ディヴァイスを鍵で操作すればいつでもコインなしで演奏できます。
Symfonion Automaten No. 39USymfonion Automaten No. 106 アップライト型ディスク・オルゴール
シンフォニオン社製小型アップライト・ディスク・オルゴール
シンフォニオン社製の大きなアップライト型ディスク・オルゴールの例。
Symfonion Automaten No. 39U Symfonion Automaten No.106 ディスク・サイズ 48.5cm

出典 カタログ・リプリント Ernst Holzweissic Nachf社 1898年 P8




シンフォニオン社製の小さなアップライト型ディスク・オルゴールの例。ケースの上に載っているピアノのキーとの比較でいかに小型なのかが良くわかります。ケースの裏側には壁掛け用の金具が付いていました。

この写真は東京都渋谷区にある川上楽器の好意で撮影したものです。




アールヌーボー様式 ( Art-Nouveau style )
g011 G0111 掲載 2005/4/19 改訂1 2007/7/12

アール・ヌーボー(Art Nouveau)はフランス語で、直訳すると「新しい芸術」でしょうか。語源はその様式で有名になったパリの美術工芸品店「Maison del' Art Nouveau」に由来します。

18世紀にイギリスで産業革命が起こり「モノツクリ」のすべての局面で機械による大量生産と品質の低下が起こりました。イギリスの工芸作家達は危機を感じ、1880年代に手工芸に重点を置いた復興運動「アーツアンドクラフツ運動」を始めました。彼らの思想の根底には「自然に学ぶ」という考え方が流れており、自然にある曲線に富んだ形を理想的な形に再構成しようとしていました。

アール・ヌーボー様式の作品、中でも家具や木工作品は自然に学んだ曲線を多用したため高価なものにならざるを得ません。しかも不規則な曲線を強調したあまりグロテスクな形(軟体動物的?)に陥っていきました。1914年に勃発した第一次世界大戦でモノツクリの世界が標準化と規格化の方向に向かったためこの様式は急激に廃れ、最終的にはシンプルと機能美をモットーとするモダニズムにとどめを刺されてしまいました。

オルゴールの世界でアール・ヌーボー様式の影響を受けたのはディスク・オルゴールの全盛期から末期にかけてでした。スイスのフランス語圏にあったメルモード社が作ったステラというブランドのテーブルトップ型ディスク・オルゴールのケース前面に描かれている花の絵にアール・ヌーボー様式の影響を感じます。ポリフォン社アップライト型にもこの様式のものが作られましたが、作ったのはドイツにあった会社なのでユーゲント・シュティール様式の項目をご覧下さい。
ステラ テーブルトップ
アールヌーボー様式のシャンデリア
ステラ17インチ1/4テーブル・トップ型オルゴールです。ケース正面の花模様にアール・ヌーボー様式の影響が感じられます。
この写真は東京都文京区にあるオルゴールの小さな博物館の好意で撮影したものです。




アールヌーボー様式のシャンデリアの例です。植物の持つ曲線を取り入れたデザインに注目してください。この写真はこの写真は兵庫県西宮市にある堀江オルゴール博物館の好意で撮影したものです。

オルゴールに影響を与えたアールヌーボー建築様式の例としてエクトール・ギマールの作品が適当なのですが、手元に写真がありません。ウィキペディアなどのサイトをご覧ください。


その頃のシリンダー・オルゴールは全盛期を過ぎており、ケースのデザインでアール・ヌーボー様式の影響を受けたのはごく僅かにとどまっているものと思われます。サイトオーナーはシリンダー・オルゴールでアール・ヌーボー様式の実例を写真も含めて見たことがありません。


アルペジオ ( arpeggio )
g011 G0112 掲載 2005/4/10

音楽用でない普通の辞典を引くと装飾音は「ハーモニーやメロディーに必要不可欠ではない飾りとしての余分な音符」(Concise Oxford Dictionary 1990)というように定義されています。しかしオルゴールの世界ではこれが必要不可欠です。楽器の場合はたくさんの演奏家が集まって豪華な音を出す(オーケストラ)とか、音と音との間の空白の時間を絶妙のタイミングで作り出すとかの工夫が有効なのですが、オルゴールの場合はコツコツと事前に編曲者が準備した音の数で勝負を決めなければなりません。人の手による演奏(物理的な制約として人の手は2本、指は10本)とは違い、オルゴールは演奏技術的な制約が割と緩やかです。

アルペジオ (分散和音) の例 アルペジオ (分散和音) の例
左側は記譜、右側は実際の演奏です。和音を短い時間で分散(例で上段は上昇方向に、下段は下降方向に)して鳴らします。一度に鳴らせば単純な音になってしまいがちですが分散させると音が徐々に分厚くなるとともに音の減衰に時間がかかり豪華な音になります。

オルゴールでよく使われているのは上記のアルペジオとトリルの2つのやり方ですが、グリッサンド、モルデント、ターン(音楽辞典をご覧ください)なども使われています。BGM用として売られているサンプリングデータを用いて編曲したオルゴール曲のCDが単調なのはこの装飾を軽視しているからではないかと思います。
参考資料 やさしい楽譜入門 大橋祐多子著 1993年 西東社



アンティーク (Antique) 
g011 G0103 掲載 2005/4/10

骨董とは中国の宋代に始めて見られる言葉で原義は料理で骨を長く煮て作った煮こごり風の羹(あつもの)の名前でしたが、後に転じて長く人々に愛玩された古物(古玩)を指すようになりました。日本にこの言葉が渡来してきて、江戸時代には広く古玩物全体を総称するようになりました。当時は美術品という用語が無くて道具と呼ばれていましたが、文人画や茶器は道具よりも高級な趣味品であり一般的な古道具(「ふるどうぐ」ですね)と区別するために中国渡来の外来語で骨董という言葉が使われるようになりました。
ところが昭和になると美術品という言葉が定着し、美術品ではない骨董品は芸術的な価値ではなくて偏狭な趣味者による衒学的な鑑賞物を指すようになってしまいました。これは美術の鑑賞が純化されたためでしょうが、身辺に古い味わいのあるものを気軽に飾って楽しむようなライフ・スタイルがもう一度提案されてもいいのではないでしょうか?
伝来の掛け軸と置物で床の間を飾りました。
木綿の座布団から取った古布
伝来の掛け軸と置物で床の間を飾りました。江戸時代のものでしょうか?田舎の貧乏侍であった当家に伝わったものですから高価なものではありません。え〜っ、陶器の布袋さんがサイト・オーナーに良く似てるって!?襖は古い大きな田舎屋敷を解体した時に発生したゴミです。








右上の額に入った絵のようなものは古い木綿の布団から切り取られた古布で二匹のウサギが仲良く並んでお月見をしているところです。
英語におけるアンティークという言葉にはそのような貶める意味はないようです。イギリスやアメリカでは法律によって、作られてから100年以上経過したものに限定されているようです。このサイトで語ろうとしているアンティーク・オルゴールは1796年から1920年ごろまでに製造されたものです。でも私にはオルゴールを中古品というジャンルには入れたくありません、気軽に楽しみたいのですがやはり威張ってアンティークと呼びたいでしょう。
ただしアンティークとか骨董品という言葉を人間の形容には使ってはいけません。サイト・オーナーも作られてからの経過年数を四捨五入すれば100ねんッ!
参考資料 世界大百科事典 Vol.11 平凡社 1972年

アントワーヌ・ファーベル ( Antoine Favre )
g011 G0108 掲載 2005/4/10

Arthu W.J.G. Ord-Hume氏の著書によれば1796年2月15日刊行のジュネーブ科学協会( Society of Arts in Geneva )の記録に「ファーベル氏がベルとハンマーを使わずにカリヨンを構成する手段を発見した。」と記されています。

アントワーヌ・ファーベル ( Antoine Favre )はスイスのヌーシャテル(時計産業が盛んでした)で1767年に誕生しました。彼は優れた時計職人でしたが彼の発明が認められたときにはすでに病気であり、貧困の内に1828年に死亡しました。

当時の時計、特にリピーターという時刻を音で知らせる仕組みを持ったものはゴング(金属の棒)やチューブラーベル(金属のパイプ)を叩いて音を出していましたが、どちらも鳴らすには大きなスペースが必要でした。アントワーヌ・ファーベルは調律した鋼鉄の歯を真鍮の円盤に植えたピンで弾いて音を出すもの(いわゆるソ・プラトウというタイプ)でした。つまりオルゴールの始まりです。

1996年はオルゴール発明200周年ということでスイスで盛大な祝典が行われました。このような個人の発明により始まった歴史は全てが記録され全てが解明されているというわけではありません。MBSIの機関誌News Bulletin July/August 2002のP39にフランク・メッツガー氏( Frank Metzger )が「サザビーのオークションに興味深いポケット・ウオッチが出ている。Ransonetが1770年に製作したもので、調律した6ティースからなる櫛歯シリンダーから成るバリレットに良く似たムーブメントが取り付けられている。」と報告しております。
スイスのオルゴール誕生200年(1796年)記念切手のカシェ。
スイスのオルゴール誕生200年(1796年)記念切手。
スイスはオルゴール誕生200年(1796年)を記念切手で祝いました。左はそのカシェ、下は切手の拡大表示です。

インターチェンジアブル  ( Interchangeable ) 
g011 G0104 掲載 2005/4/10 改訂1 2005/7/19

シリンダー・オルゴールの曲目を増やす根本的な解決方法としてシリンダーを交換式にする方法が開発されました。当初はシリンダー・オルゴールを製作するときに、そのオルゴール専用のシリンダーを何本か製作しオルゴールに添付して販売されていました。この方法だと機械的な互換性もその特定のオルゴールとシリンダーに合わせるだけでした。この初期のシリンダー交換式オルゴールをリチェンジ・ボックスと呼びます。

最終的に同じメーカーの同じ型番のオルゴールであれば、どのシリンダーでも交換できるように互換性を高めたインターチェンジアブル・オルゴールが開発されました。互換性を保証するためにシリンダーとムーブメント双方の工作精度を高めねばならないので、当時としては大変な作業だったのでしょう。普通のインターチェンジアブル・オルゴールの場合、シリンダーの交換はシリンダーの両端の軸を留めるためにベッドプレート側に取り付けてあるロック装置を外してシリンダーの両端の軸を持ち上げて行う形のものが多かったようです。
David BowersのDavid Bowersのエンサイクロペディアにこの項目に関する多くの写真や解説が掲載されていますのでご覧ください
大型のインターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールの例。
インターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールのムーブメント。
大型のインターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールの例です。
この写真は神戸市六甲山にあるホール・オブ・ホールズ六甲の好意で撮影したものです。





左はシリンダーを取り外したインターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールのムーブメントです。
出典 カタログのリプリント Heeren Bros. & Co., 1869年 P14
インターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールは極めて高価なものでした。ディスク・オルゴールがライバルとして台頭してきましたので、いろいろな廉価版のインターチェンジアブル・シリンダー・オルゴールが開発されていました。

パイラード社製の溝付きシリンダー
交換用シリンダーの長手方向に大きな溝が切られておりムーブメントのシャフトに落とし込むように装着するタイプです。David BowersのエンサイクロペディアのP46にこの項目に関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。

クェンデ社製のユニバーサル
普通の交換用シリンダーと同じ形ですが、1曲しか入っていない廉価版のシリンダーを使用するものです。David BowersのエンサイクロペディアのP63上にこの項目に関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。

ジュノー社製のアレクサンドラ
交換用シリンダーは薄い金属でできた円筒状のスリーブでシリンダーの表面だけを取り替えるものです。David BowersのエンサイクロペディアのP63下にこのタイプに関する写真や解説が掲載されていますのでご覧ください。

いろいろとシリンダー・オルゴールのメーカーは努力したのですが、ディスク・オルゴールの攻勢には立ち向かえなかったようです。そして直後に起こった蓄音機の圧倒的な力の前にオルゴール業界全体が滅びてしまいました。

インテグラル型 ( Integral Style )
g011 G0105 掲載 2005/4/10

通常のアップライト型オルゴールはビンとオルゴールが別になっていますが、一体(上下が分割できない)に作られているものもあります、当然ものすごく重い。このような型をインテグラル型(Integral Type)と呼ばれることもありますがその用語は定着したとはいえません。左の写真は珍しいインテグラル型のポリフォン22インチ、長崎市内のとあるレストランで撮影しました。このオルゴールは1982年7月23日に起こった長崎の大水害で冠水しており演奏不能でした。
インテグラル型オルゴール

ウインナ・スタイル(Viennese style)
g011 G0101 掲載 2005/4/10

スイス製のシリンダー・オルゴールは全世界に広まりオルゴールの代名詞となりましたが、19世紀初頭においてはオーストリア・ハンガリー帝国のウイーンやプラハにおいてもオルゴールが製造されていました。ウイーンとプラハで作られたオルゴールは現代のコレクター達によってそのクラフツマンシップと優れた音質が高く評価されています。収集家にとって最後に収集対象となるのがこのウイーンやプラハのオルゴールであると言われています。オルゴールに関するこの掲示板MMDでもしばしば取り上げられています。

ボヘミアのオルゴール職人であるフランチシェック・ルゼビチェックとアントン・オルブリッヒはスイス製とは逆に低音側の櫛歯が右側、ガバナーの左隣に位置するという特徴を持つウインナ・スタイル(Vienne style)と呼ばれるムーヴメントのデザインを確立しました。またピンの長さがスイス製と比べて長い(2倍近く)のも特徴です。最も太くて長い最低音の櫛歯には2つのチップが取り付けられているものもあります。
ルゼビチェック製の典型的なウインナ・スタイル
ビーダーマイヤー・クロック
ルゼビチェック製の典型的なウインナ・スタイルのムーヴメント。単純な形のガバナー、大きなスプリング・モーター、右側に低音(長い櫛歯)が配置されている、長い(通常の約2倍)ピンがシリンダーに植えられているのに注目。ケースの内側四隅が三角形断面の木材で補強されています。
ケース右下から出ている紐を引くと演奏が始まります。
この写真は兵庫県西宮市にある堀江オルゴール博物館の好意で撮影したものです。


ビーダーマイヤー様式の時計(暖炉の上に飾るためのマントル・クロック)に組み込まれたウインナ・スタイルのオルゴール。
出典Kammspielwerke aus Wien und Prag:Opernmelodien OEAW PHA CD 10 ( Musical Boxes from Vienna and Prague: Operatic Melodies )のジャケット
Reproduced with permission from “Kammspielwerke aus Wien und Prag:Tanzmusik OEAW PHA CD 6 Musical Boxes from Vienna and Prague: Dance Music” and “Kammspielwerke aus Wien und Prag:Opernmelodien OEAW PHA CD 10 Musical Boxes from Vienna and Prague: Operatic Melodies” by Prof. Dr. Dr. h.c. Herwig FRIESINGER, Generalsekretär der Österreichischen Akademie der Wissenschaften.
原著作権者Prof. Dr. Dr. h.c. Herwig FRIESINGER, Generalsekretär der Österreichischen Akademie der WissenschaftenよりこのCDのジャケットの一部をこのサイトに掲載することについて2005年1月10日付書面(e-mail)で許可を受けております。 転載禁止
スイスとは異なる設計にしなければならなかったのは当時のヨーロッパの政治状勢に起因するものがありました。1815年にウイーン条約が結ばれスイスの中立が保障されましたが、同時にスイスからオーストリア・ハンガリー帝国に対する禁輸措置が講じられました。オーストリア・ハンガリー帝国で販売されるオルゴールは部品も含めてスイス製と間違われてはいけない、つまり一見してスイス製とは異なる外観を持っていなければならなかったたのです。
 プラハとウイーンのオルゴールには独特の編曲が行われていました。それはアルペジオトリルなどの装飾音が少なくオリジナルの楽譜に忠実で、長音や休符についても繰り返しやトリルで埋め尽くされていませんでした。プラハとウイーンの編曲者はよい響きと良く聞き取れるメロディーラインに留意していました。演奏時間を同じ大きさのオルゴールで比較するとスイス製よりもウインナ・スタイルのほうが長いようです。この編曲のスタイルも長年変化がありませんでした。
 ムーヴメントは主として置き時計(Austrian Mantle Clock)、ミュージカル・タブロー(風景の一部に時計台等が描かれた音楽の出る油絵)、手芸用品用バスケットなどに組み込まれなした。そのため外から見えないのでウインナ・スタイルのムーヴメントはずっと何の変化もなく永年に渡って生産を続けられました。スタート・ストップや曲目変更はムーヴメントの底を通っている紐(コード)によって操作されるもの(時計の時報機能に向いている)が多いです。もちろん普通のケースにも組み込まれました。例外もありますが総じてそのケースは何の飾りもないプレーンなものが多かったです。ケースの内側四隅に断面が三角形の細い木材で補強されているのと、蝶番が小さくて単純な形をしているのも特徴です。
 詳しくはEssay002「プラハとウイーンのオルゴール No.1」Essay003「プラハとウイーンのオルゴール No.2」を参照して下さい。