パウル・ロホマン ( Paul Lochmann )
g061 G0603 掲載 2005/4/10 改訂1 2007/7/13 改訂2 2017/2/3
パウル・ロホマン( Oscar Paul Lochmann )は1874年のクリスマスにザクセン( Saxony )のツォイツ( Zeutz )で誕生しました。ロンドンに住む発明家エリス・パール( Ellis Parr )がの原型とでも言うべき機械のアイデアを1885年に思いつきました。エリス・パールはドイツので活動していた実業家のパウル・ロホマンにそのアイデアの工業化を相談しました。ロホマンは家庭用品を作る会社を経営していましたのでそのアイデアに興味を持ち試作に取り掛かりました。最初に作られたが交換できるオルゴールはで回転するが、固定されたボール紙製のディスクの上を回転するものだったようです。1887年までに金属製のディスクが、固定された櫛歯の上を回転しながら弾くという形になりました。そしてエリス・パールとともにを設立しました。
1889年までにシンフォニオン社のパウル・ウェンデルランド( Paul Wenderland )によってが考案されました。ディスク・オルゴールの原理はかなりシンプルなもので、比較的安価であったため当時の家庭に広く受け入れられました。シリンダー・オルゴールは高価だったので同じような安価なディスク・オルゴールを作るメーカーが次々とあらわれました。
ライプチッヒ市郊外の町ゴーリス( Gohlis )にあったは大きくなりました。そこで職長( Foreman )だったのが( Gustave Brachhausen )です。彼はロホマンと意見の相違があり同社のパウル・リスナー( Paul Reissner )を伴って退社し、すぐ後に最大のディスク・オルゴール・メーカーとなる新しい会社を設立しました。シンフォニオン社とポリフォン社は長く特許をめぐって裁判で争いましたが、最終的にポリフォン社に有利な判決が出て特許紛争は終わりました。
その後両社はたくさんのディスク・オルゴールを市場に供給しました。ロホマンはスイスから櫛歯の調律をする職人をたくさん連れて来ました。またサンクロワ村の住民である音楽家であり有能な編曲技術者であったオクタブ・シャイエ( Octave F. Chaillet )の協力を得るようになりました。シンフォニオン社は400人の従業員を抱えるようになりました。後にオクタブ・シャイエもシンフォニオン社からグスタフ・ブラッフハウゼンがアメリカに設立したレジーナ社に加わりました。
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パウル・ロホマンの肖像です。
ロホマン社製の大型ディスク・オルゴールの例です。ロホマン社独特の形をしたに注目してください。 この写真は京都市右京区にある京都嵐山オルゴール博物館の好意で撮影したものです。
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との競争が厳しくなってきた為、最初にオルゴールの生産をやめたのはシンフォニオン社でした。1900年ごろのことで、シンフォニオン社がオルゴールの生産を行ったのは実質的に10年程度でした。1900年にロホマンがシンフォニオン社と縁を切ってから、最も優れたディスク・オルゴールを作ろうとして設立したのがオリジナルミュージック社(Original Musikwerke Paul Lochmann オリギナール ムジーク ウェルケ パウルロホマン)です。ここの大型機は大きな豊かで優れた音を持ち、ドイツで最後までディスク・オルゴールの生産を行いましたが第1次世界大戦の影響で社業を閉じざるを得ませんでした。
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ハープ・エオリアン ( harp eolienne )
g061 G0604 掲載 2006/3/18
Conchonによって発明されたの型式の一つです。とよく似た長短2つのを持っていて、長い方は普通の櫛歯、短い方は比較的硬く作られていて大きな音を出す櫛歯です。この小さな櫛歯にはがよく取り付けられています。普通のオルゴールとは逆にチター・アタッチメントが櫛歯の下側に取り付けられているものが多いようです。ピアノ・フォルテなどと比べるとハープ・エオリアンは比較的小型のオルゴールが多いようです。
残念ながらハープ・エオリアンの特徴がはっきりわかる写真をサイト・オーナーは持ち合わせておりませんし、まだ実機を見たこともありません。録音例も私のCDコレクションの中にはありません。残念ながらこの記事は文献だけに頼ったものです。
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バーリー・ジョンソン ( Barry Johnson )
g061 G0606 掲載 2005/9/3 改訂1 2006/10/18 Barry Johnson Music Box Co.は用のをやっていた会社です。いつごろから事業を始めての会報に広告を出稿していたのか調査を始めましたが、大変。サイト・オーナーは会報の整理がまだ(の会報とあわせて厚さ1メートル以上あります)です、これからがんばります。
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製品のディスクは少し硬い材質でニッケルメッキのサテン仕上げを施されており、シルク・スクリーンで商標のBarriè Star、住所、曲名とStella’s Sisterの絵が印刷されています。サイト・オーナーもあちこちから、いろいろなリプロダクションのディスクを買いましたが、その中でも美しい仕上げでしょう。そのせいか音も優れているような気がします。はミラのディスクに似た独特の形状です。無論このプロジェクションの形状でも機能的にはまったく問題がありません。
左の写真はディスクの表面にシルク・スクリーン印刷されているStella’s Sisterの絵です。 「あとりえ・こでまり」コレクション
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カタログによるとのディスクから22インチのマスター・プレートにプロジェクションの位置がドリルでコピーされ、それを元にディスクが作られていました。彼が手がけていたメーカーは下記の14社にも及んでいました。 Arion (アリオン) Britannia (ブリタニア) Criterion (クライテリオン) Edelweiss (エーデルワイス) Euphonia (ユーフォニア) Kalliope ( または カライオピー) Lochmann (ロッホマン) Mira (ミラ または マイラ) New Century (ニューセンチュリー) Perfection (パーフェクション)、 Polyphon () Regina ( または リジャイナ) Stella () Symphonion ()
彼を直接知っている友人の話を紹介しましょう。彼はアメリカに住んでいますが、まるで修道士のような生活をしています。極めて誠実で、世俗的な持ち物つまりテレビ、自動車やコンピュータを持っていないそうです。最近は高齢になったためか事業から引退しているらしいのですが、残念なことです。
喜ばしいニュースです。今年の7月にダメモトで彼にディスクを発注していましたが、返事が来ました。ビジネスを再開したようです。価格は以前と変わらない良心的なもので、納期も2ヶ月という驚くべき速さです。もし彼のディスクをご希望でしたら、「あとりえ・こでまり」が輸入代行をしますのでお申し出ください。
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バリエィ ( barillet )
g061 G0605 掲載 2006/3/20 改訂1 2014/3/24 ごく初期のの型式の一つで、封蝋に捺す印璽( fob seal )、杖の握りなどに収容するために作られたもので、長さが1インチ(25mm)ぐらいの極めて小さいものです。大きさの制限で低音を出すのには無理があり、音楽的な観点からは優れたものとは言い難いと思います。
このようなオルゴールは宝石や貴金属が贅沢に使われているものも多く、当時の裕福な貴族や商人などのステイタス・シンボルというべきものでした。
一般の人に販売するために作られた後世のオルゴールとは違って、一つ一つがオーダーメイドの工房で作られた手工芸品(宝飾品)です。したがって標準的な設計というものはなく、部品の配置、の数や形状など全てにわたってバラエティーに富んでおります。
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切手の左側がバリエィの、右側が宝石を散りばめたです。中央の円柱状のドラムにを植えられています。後のに相当するものです。櫛歯は1本1本が重なって束ねられて( laminated teeth )います。 と呼ばれるムーブメントと比べると、後のにより近い形態をしています。
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このような小型のムーブメントは音も小さく音楽的には地味なもので、あまり日本の博物館には招来されていませんでした。海外のオークションでもなかなか出品されません。京都市右京区にある京都嵐山オルゴール博物館にはを経営していたギド&ジャクリーン・リュージュ夫妻のコレクションがあり、その中にこのような珍しいごく初期の印璽に組み込まれたバリエィのオルゴールが公開されています。そこのパンフレットによるとスイスのが1796年に作ったもので、金で作られた直径30mmぐらいの印璽の底の部分に組み込まれています。
サイト・オーナーもこのオルゴールを見ましたが、とても小さくてクローズアップの準備が無かったので写真を撮影できませんでした。音は録音を聞かせてもらえます。
バリエィが演奏している所の動画です。
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パーケットリー ( parquetry )
g061 G0629 掲載 2005/7/3
の蓋やの前面は小さな木片を組み合わせて作った模様で飾られている場合がよくあります。この装飾技法を木工の世界では花や楽器などの模様の場合は、幾何学的な模様の場合はパーケットリーと呼びます。もともとはイタリアで始まったもので、型紙に糊で貼り付けた薄い木材(何枚か重ねて)を糸鋸で切り抜いてから組み合わせるという根気の要る作業です。
色は木材の自然の色を生かす場合もありました。白、黄色、薄茶色、焦げ茶色、赤、黒とさまざまな材木があります。紫檀( シタン rosewood )、白檀( ビャクダン sandalwood )、オレンジ ( orange )、シトロン( citron )、マホガニー( mahogany )、黄楊( ツゲ boxwood )、柊( ヒイラギ holly )、楓( カエデ maple )、黒檀( コクタン ebony )などです。自然の色では間に合わない場合は染料(花の赤やピンク、葉の緑)で染めました。パーケットリーでは金属や貝殻の内面(螺鈿らでん)の線やパターンを埋め込むことも併用されていました。
上下左右対称なモチーフとか幾何学的な直線や円などの組み合わせからできているパーケットリーの制作は、自然界の非対称な曲線を主体とした花模様などのマーケットリーとは異なり大変困難であったと思われます。シリンダー・オルゴールの蓋やケースにパーケットリーが見られるのは、高価な・など限られています。
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すばらしく手の込んだ幾何学模様のパーケットリーが施されたケース。の最盛期(製造番号253XX、1850年ごろの作品)に社の威信をかけて作られたグラン・フォーマット・オーバーチュア。 この写真はある個人コレクターの好意で撮影したものです。
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ピアノ・フォルテ ( piano-forte )
g061 G0607 掲載 2005/4/17 改訂3 2014/3/24
フォルテ・ピアノとも呼ばれます。の型式の一つで、強い音と弱い音を出すことのできるオルゴールです。オルゴールは常に同じ力でを弾くため、編曲の工夫で2音同時に弾く以外には音の強さを変化させることができず単調です。音の強弱をつける方法として弱音専用の櫛歯を用意する方式と、弾く力(ストローク)を変える方式がありました。
弱音専用の櫛歯を用意する方式はによって1840年に発明されたといわれています。普通の強さの音を出すための長い櫛歯(長さは全体の約3/4で左側にあり、低音は左端)と弱い音を出す短い櫛歯(右側にあり、低音は右端)がセットになって組み込まれています。一見すると櫛歯に入った切れ目のつながりが右に寄った山型に見えます。David BowersののP44にこの特徴がよくわかる写真が掲載されていますのでご覧ください。下の写真をクリックして拡大するとその特徴が見られます。このタイプは他のオルゴール・メーカーによっても模倣されましたが、ニコル・フレール社が最も多く生産しました。ニコル・フレール社のピアノ・フォルテはそのすばらしいにより最も優れたオルゴールの一つといえましょう。
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ピアノ・フォルテ・シリンダー・オルゴール 拡大すると右側にピアノ・コーム(短い弱音専用の櫛歯)が見えます。
ファミリア坂野コレクション
通常強い音(フォルテ)で演奏する部分は左側に、小さな音(ピアノ)で演奏する部分は右側に取り付けられています。
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もう一つのやり方は櫛歯を弾くストロークを変化させる方式です。この方式だと櫛歯は1枚だけで、シングル・コーム・ピアノ・フォルテと呼ばれることもあります。これには二つの方式があり一つはシリンダーに植えられたの長さを変える方式です。長いピンは強い音を出し短いピンは弱い音を出すものです。現存するこの方式のオルゴールの大部分はAlphonse Malignon of Genevaのラベルを持っています。このオルゴールは実際はルクルト(Lecoutre-Duperrutno刻印が打たれている)によって作られていたようです。David BowersののP47にこのタイプのアンリ・カプト製(極めて珍しい)ピアノ・フォルテ・オルゴールの写真が掲載されていますのでご覧ください。このタイプのオルゴールをした場合、ピアノ・フォルテであるということに気づかない職人は全て同じ高さになるようにピンを研磨してしまいます。このようにして珍しい方式のピアノフォルテ・オルゴールは一見修理ができたように見えながら破壊されてしまったというケースが多いと思われます。
過去に重大な事故を起こしたこのタイプのオルゴールを修復したレポートがの機関誌 The Music Box の2009年冬号388〜390ページに掲載されています。
もう一つの方式はピンの角度を変えるやり方です。シリンダーに植え込まれた一部のピンを上方向(シリンダーの回転方向)に曲げると、その一部のピンだけが櫛歯を弾くストロ−クが小さくなり弱い音を出すことができます。この方式は家の工房の一つであるLecoutre-Granger)によって作られました(出典Mechanical Music 2004年夏号P39、2005年春号P32〜38)。このタイプのオルゴールにはExpressionまたはExpressifという表示があります。
ピンの長さを変えたり、ピンの角度を変える方式のピアノ・フォルテは残存するサンプル数が極めて少数なので、ごく初期のルクルト工房で小規模に行われた試作的なものと思われます。このタイプのオルゴールについてはMBSI日本支部2008年8月発行の機関誌自鳴琴30号26〜35ページに詳しい翻訳記事が掲載されています。
完全に動作する素晴らしい個体がオルゴールの小さな博物館に1台(多分日本でここだけ)収蔵されていますが、残念なことに閉館となってしまいました。
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ピース・オジュー ( piece a oiseau )
G0608 ただ今執筆中です。メールで督促していただきましたら、この項目のUpLoadを急ぎます。
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ピッコロ ( piccolo )
g061 G0609 掲載 2006/3/14 修正1 2016/12/11
普通のの高音側にごく短い櫛歯が追加されたオルゴールをピッコロと呼びます。ピッコロは他のいろいろなフォーマットに追加されている場合が多いです。たとえば・ピッコロとか・ピッコロというような具合です。
その短い櫛歯はメロディーラインを演奏する主たる櫛歯よりも1オクターブ高く調律されていて、歯の厚さも幾分か分厚くなっています。この櫛歯はいつも使われているというわけではなくて、特に効果的なパッセージだけに使われ明瞭な輝かしい装飾音を付け加えます。
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シリンダー右端がピッコロ部分
ピッコロ部分の拡大
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写真の例はデュコマン・ジロゥ工房の作品で、普通のオルゴールにピッコロ部分が追加された例です。ところどころで効果的にキラキラとしたピッコロ部分の演奏を聴きとることが出来ます。
1曲目「連隊の娘」← クリックしてください、演奏が始まります。Windows Media Playerの画面を最小化すればこの文を読み続けることができます。 2曲目「ラ・ファヴォリータ」← オススメです。 3曲目「セビリアの理髪師」 4曲目「ノルマ」 5曲目「ラ・ファヴォリータ」 6曲目「ルクレツィア・ボルジア」 1〜6まで通しの演奏 「1〜6」
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ヒドン・ベル ( hidden bell )
g061 G0610 掲載 2005/4/19
この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「」G0636の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。
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ピニオン・ドライブ ( pinion drive )
g061 G0627 掲載 2005/4/19
この用語に関してはオルゴール用語集の中にある「」G0113の記事を参照してください。その記事の中では赤字でこの用語を表記しています。
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ビュフェ・スタイル ( buffet stule )
g061 G0611 掲載 2005/7/3
写真のような形をしたのことをビュフェ・スタイルと呼びます。前面の扉が木製で中の見えないものと、前面の扉にガラスがはめ込まれていて中のが見えるものとがあります。の家庭用といったところでしょうか。
このタイプのオルゴールは中のムーブメントの動きを見て楽しめるものです、特にの場合などは鐘や太鼓の動きが楽しいものです。現在でもスイスのがこれに近い形のものを作っています。
このタイプは多くのメーカーが手がけており、特定のメーカーが得意としたものではないようです。
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ビュフェ・スタイルのオルゴールで、扉を閉めた状態です。扉の面積が広いので美しいを取付けることができます。 この写真はノフ・アンティークス・シェルマンの磯貝氏の好意で撮影したものです。
ビュフェ・スタイルのオルゴールで、扉を開けて中のムーブメントが見える状態です。 撮影記録なし。
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