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◆ おしゃべりなオルゴール ◆
Essay001 掲載 2005/1/31 改訂2 2012/12/29
私はお喋りな古いディスク・オルゴール、産まれたのは約100年前、ドイツのライプチッヒという大きな町でポリフォン社(Polyphon Musikwerke,A.,G.)によって作られました。日本にやってくる直前はスイスのセーヴェンに在るオルゴールの博物館The Museum of Music Automatons( Das Museum für Musikautomaten )で来館されたゲストの皆さんを喜ばせていました。そこではオルゴールの権威者である館長のヴァイス・スタッファー博士( Dr. h.c. H. Weiss-Stauffacher )にかわいがられていました。日本に来てからは佐伯貿易の手を経てサイト・オーナーの家に落ち着きました。
私の歌声はいかがですか?私のご主人は小学生のころ(40年以上前)からオルゴールが好きで、今までにいろいろと調べてきた怪しい知識などを皆様に知っていただこうとしております。間違いなども多いと思いますがそのときはメール等でお知らせくだされば幸です。
ポリフォン社製24インチテーブル・トップ型ディスク・オルゴール
ポリフォン社製24インチテーブル・トップ型ディスク・オルゴール
音楽はいつの時代でも人々に喜びや励ましを与えてくれるものです。長い間、人々は手軽にいつでも音楽を楽しめるようにならないものかと考えてきました。CDやレコードのない時代です。そして熟練した演奏家の代わりに機械に音楽を演奏させようとしました。教会の高い鐘楼にあるたくさんの鐘を自動演奏するタワーカリヨンという仕掛がその始まりです。次にたくさんの細いピンを植えた金属の筒や板をゼンマイで回して、櫛のような形をした鉄の歯を弾いて音楽を演奏する小さな機械が作られました。
家庭で楽しむためのオルゴールの誕生です。1796年スイスのアントワーヌ・ファーベルの発明です。最初のオルゴールは時計の付属品に過ぎませんでしたが、すぐにその音楽的な潜在的能力が認められ、次第に大きくなり独立した楽器としての道を歩み始めました。
この後に3つの重要な発明がなされシリンダー・オルゴールは完成したものとなりましたダンパーチューニングウエイト、そしてセメントです。ダンパーは今鳴っている櫛歯をもう一度鳴らそうとするときに、次の音を出す直前に一旦音を止めて、新たに澄み切った音を出す仕組みです。チューニングウエイトは櫛歯の裏側に取りつけられた鉛の錘です。この錘により小さな鉄のカケラからできている櫛歯からは想像もできないような豊かな低い音が出るようになりました。シリンダーの中に松脂や砂、石灰等の混合物で出来たセメントというものを高温で熔かして流し込む技術が開発されました。これでシャラシャラという音が、まろやかなコクのある音に変わりました。 シリンダー・オルゴールの見本  優れたシリンダー・オルゴールの例
アップライト型ディスク・オルゴールの見本  ディスク・オルゴール シリンダー・オルゴールは熟達した職人が一つ一つ丁寧に手作りしていたので極めて高価なものでした。組み込まれている曲も機械的な制約により4曲から12曲にすぎません。シリンダー交換式のオルゴール(インターチェンジアブルとかリチェンジ)も作られましたがとっても高価な工芸品でした。もっとたくさんの曲をもっと安く楽しめないものだろうかという願いに対して1885年ドイツのライプチッヒ市でパウル・ロッホマンがディスク・オルゴールを初めて作りました。丸い鉄の薄板に機械でたくさんの突起(プロジェクション)を打出したディスクを回転させて、スターホイールという歯車を押して間接的に櫛歯を弾いて音楽を演奏するものです。ディスクは一旦原型を作っておけば機械で大量生産できましたので、1台のオルゴールがあれば安いディスクを買って多くの曲を楽しめました。次々と大型の機械が作られ、強力なゼンマイとスターホイールにより櫛歯を弾く力が一段と強くなり、さらに豊かな低い音が出るようになってオルゴールは音楽の一つの世界として完成されました。
機械としての制約から長くても2分間と言う短い時間で、大切な低音の使用頻度が限られた中で、その曲の印象を伝え華となる盛り上がりを織り込むのは音楽家でもある編曲技術者です。ディスク・オルゴールが作られていた当時のライプチッヒ市は音楽産業が盛んで、優れた編曲技術者に恵まれていたのでしょう。短い間に驚異的な発展を遂げたオルゴールですが、エジソンが発明した蓄音機との競争に敗れてしまいました。蓄音機からは人の歌声が聞こえてきたのです。シリンダー・オルゴールで約100年、ディスク・オルゴールで約30年の瞬く間に飛び去った夢のような歴史です。

それではオルゴールに関するエッセイや演奏をお楽しみください。

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